昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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天敵・祖父の最期(2)

2007.01.31 (Wed)

「男の癖にメソメソしあがる」
「男の癖に言い訳するな」
「男の癖にしゃんとせんか」
「男の癖に」というのが祖父の口癖であった。それでもボクが言うことをきかないと、「男の癖に・・・」と言ったついでに「キン○マ切ってしまうぞ」と、付け加えた。そう言われるとボクは、何もしゃべれなくなった。

祖父の、「へ」の字に曲がった口元がボクを蔑んでいた。「男って何だ」と、子どもながらに考えた。しかし、考えることと言えば祖父に反抗することばかりであった。反抗的な態度をすれば、ますます祖父はボクを追い詰めてきた。そうしてボクは、自分ひとりの世界へ没入していった。ひとりでいれば泣くこともないし、言い訳をする相手がいないと分かったからである。

祖父はことの外、自分勝手で頑固であった。それも半端なものではなかった。昔の田舎は男尊女卑の習慣が根強く、家長に逆らうことは絶対許されなかった。長男は例外なく家を相続し、家業を継がなくてはならない、そういったことが根底にあったのだろう、自分の意に反することがあると徹底的にそれを正し、先祖の教えを第一として、死ぬまで全うした。ボクが5年生の時であった。

祖父が倒れる数週間前、大阪の親戚の結婚式に列席した。その披露宴で、生前の思い出とばかりに大酒を呑んだという。もともと祖父は滅法酒が強く、我が家の台所の板間の下にドブロクを隠して、のべつまくなしに呑んでいた。朝、起きがけにまず一杯。その勢いで野良へ出て、昼めしついでに一杯。夕食が終わると、また板間にあぐらをかいて、アルミ杓で2杯3杯と煽った。それでも一切表情を変えなかった。

そんなある日のことである。
「父さん、じいちゃんが便所で寝てる」と叫びながら、父とボクのいる畑へ転がり込んだ。
「何! 便所で?」
父は手にしていた農具を放り出して家に駆け戻った。
祖父は便所で大の字になり、大鼾をかいて寝ていた。呼びかけても反応がなかった。それから2日間大鼾をかき続け、一度たりとも目を覚ますことなく逝ってしまった。

祖父の遺品の中から結婚式の時の写真が出てきた。列席者全員で撮ったものと、親戚周辺で撮ったと思われる写真が数枚あった。どの写真も、我が家では殆ど見せることのなかった、機嫌のいい表情であった。
ひな壇の2列目の端に立っていた祖父の目はカメラの方を向いていたが、顔の表は、どちらかと言えば外寄りの「仏顔」になって写っていた。

ボクはかつて、その写真の祖父の表情に似たあるものを憶い出した。父がストックしていた円山応挙の画集の中に、それはあった。掛け軸を印刷したもので、何という題であったかは思い出せないが、生前に見せていた鬼瓦のような祖父の顔と似ても似つかない表情をして、静かに佇んでいた。

何にしても徹底的にボクを監視し、根性が曲がるほどに追い詰め、圧制を欲しいままにしてきた祖父の幕切れは、実に呆気無いものであった。

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