昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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菜緒 ---3

2015.06.20 (Sat)

naos2

聡の勝手な思い込みだったのかも知れないが、普通の、ちゃんとした会社から見れば、とんでもない会社である。そういう怠惰なものを許してしまう空気が、会社全体に蔓延しているのだろうかと。

 一体、経営者は何を考えているのかと、そう言われても仕方がないほど、よろしくない強烈な空気を充満させていた。
 聡にしても最初に入った会社がこれだから、ともすれば「これでいいのだ」と思ってしまいそうであった。だが、一見だらしのなさそうな社風でありながら、ここぞという時の集中力が、あの空気の中から、どうして生まれてくるのだろうか、不思議でならなかった。

 社会人と学生との間にある、理解し難い違い。たぶんそれは生き方や価値観の違いという一般論的なものではなく、ヒューマンリレーションといった聡としては未体験ゾーンであったから、分かるはずもなかったのだ。

 ディレクターの大隈は、自他ともに認めるいい加減な男であった。しかし仕事のセンスといい、スピードといい、彼の右に出るものはいない。だから、彼がいくら遅刻しようと、出先を告げずに外出しようと、酒の匂いをプンプンさせながら仕事しようと、誰も文句を言う者はいなかった。

 スチールデスクの引き出しの奥には、いつも好きな酒が常備してある。酒なら何でもいいのかも知れないが。仕事の合間にチビリチビリと呑っている姿を、聡は時々、デスクライト越し見ていた。

 入社した当時、大隈は聡のことを「俺と同じ臭いがする」といったことがある。いい加減な大隈のことだから、根拠もなく言ったのだろうと聡は思っていた。だいいち、いい加減さにおいては大隈には敵わないし、それに聡は下戸だ。一滴の酒も飲めないのだ。

 それだけではない、大隈に似ても似つかぬ小心もので、結構周囲に気をつかう方なので、どこが同じ臭いなのか、聡には見当がつかなかったのである。

 多少短絡的であるが、大隈の豪放磊落さの中にある繊細さとのギャップは、聡にはある種、畏敬らしきものを感じたところであった。特別お得意を説き伏せる話術があったわけはないらしい。

しかし、自分が作った作品への、自信とか愛情のようなものは、特別な話術などなくても、伝わるものは伝わるだろうし、また、その自信は総て周囲を抑える力になっていたはずである。



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