昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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我が「三菱2号」。

2006.12.12 (Tue)

東京オリンピックの2年前の昭和37年、国道の改修工事がボクの村にもやってきた。それまでは、大型バスが通れば、対向車は避難地でやり過ごさなければならないほど、細くて曲がりくねって、しかも土道であった。しかし、オリンピックとは直接関係がなかった。

土道だからワダチと水溜まりが酷く、土埃も半端ではなかったし、不注意にも水溜まりの横を歩こうものなら、通りがかりの車に泥水を浴びせられたりしたものだ。それで数カ月おきに、ブルドーザー(前輪と後輪の間にショベルがあるタイプ)が地均しをして走った。

改修工事は、地元の大人たちに大歓迎された。もちろん、広くてまっすぐになり、しかもアスファルトになるからであるが、それだけではなかった。その工事に村の人たちがかり出されたからであった。収入の少ない貧しい農家にとっては、実に歓迎すべきことに違いなかったのだ。

その日からボクの村は、連日のように騒がしくなった。曲がりくねった道路を真直ぐにするために山を削り、谷を埋め、護岸工事をし橋を架けた。道路脇の至る所に大型重機が鎮座した。そして等間隔で大きな砂山ができ、コンクリートブロックや石垣用の石が積まれた。それをボクはつぶさに見ていた。毎日毎日。

そんなある日、事件は起こった。我が家から50mと離れていない山が削られることになり、ダイナマイトを仕掛ける時のために、巨大な防護用のフェンスが築かれた。爆裂音は四六時中響き渡った。発破が起こる度に、大小の石が四方八方に飛び散る。地響きがしてフェンスが鳴った。

大雨の日、考えられない事件が起こったのである。大音響とともに家が大きく揺らいだ。我が家をスッポリ包んでいた筈の巨大なフェンスを越えて、大人一抱えほどの大石が降ってきたのである。そして、笛の音が何度も聴こえた。2階の屋根に大穴が開き、柱をなぎ倒し、折からの雨が滝のように流れ込んだ。

2階の部屋を寝間にしていた叔父は、幸い留守をしていたので難を逃れることができたが、直径2mの穴と崩れた壁、家財道具の殆どが破壊され、恐るべき惨状になった。石は叔父の部屋に止まっていた。これが床を破って1階に落ちたらと思うと背筋が寒くなるほどであった。
ともあれ、工事は一時中断し、我が家の修復工事に専念してもらうことになったのである。

何ごともなかったように時は過ぎ、改修工事が再開されたある日のことである。けたたましい金属音とともに、歓声が沸き起こった。
ボクは慌てて表へ飛び出した。目の前には見たこともない大型のブルドーザーが黒煙を吐いていた。その回りを数人の作業員が取り囲み、現場監督らしき人に話しが聞こえた。「三菱2号」。ボクは、それが何であるかすぐに判った。戦車のような鉄の塊は、三菱が新しく開発したブルドーザーの名前で、今日が初のお披露目だったのだ。

運転席は鉄の梯子を上った高いところにあった。現場監督が、くわえ煙草で運転席によじ登ると、キーを入れた。同時に、運転席横にある煙突の先の、鉄のフタが弾かれて「カチン」という音が響いた。一呼吸遅れて「ダッダッダッダッダッ・・・」と、大音響が谷間を揺るがし、黒煙を空高く吐き出したのであった。

ボクは、その一部始終を見ていて、息が止まりそうになった。
その日以来ボクは、ド迫力で山を削る「三菱2号」の虜になり、とうとう自前の「三菱2号」を作る決心をした。父親が捨てた廃材を切り、ノミで削り、アームには切ったブリキ片を釘で取り付けた。

三菱-BD32.jpg

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コメント

すっげ~。…と、わかるなあ。

すっごいマシンの物量感への感動と、それから、それから…なんかわからんけど、そのメカニズムみたいなもの。ものすごいモノが、ものすごい力で動いている。これへの好奇心と、いわば敗北感。

男の子って、だいたいがこういうものにイケれるもんです。夏海さんもイカれたし、ぼくもイカれた。夏海さんほど鮮明な映像ではないけれど、ぼくも、それ的な感じはあります。

鉄人28号は、リアルには、ものすごい鉄のかたまりなんでしょ。だから、それが意のままになるとかそういうことも重要だけど(表裏一体だけど)、本当は、その圧倒的な物質感というか物量感に、子供はイカれてしまう。というか、人は。

保坂さんの文章のなかに、絵画はサイズだ!みたいな言葉がありました。これは正解だなあと思った。いくら精密な縮小版でも、サイズが違えば感動の質が違う。本物の感動とはほど遠いものになる。

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