昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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善人の宿。

2006.12.16 (Sat)

「悪たれ小僧」の家は村の一番上にあった。国道から脇道に逸れたところにH川に架かる高い橋があって、「悪たれ小僧」の家のことを高橋(たかばし)と別称されていた。脇道は、更に奥に入ると小学校のある山の上の村に繋がる山道と合流していた。学校へは国道を使ってもよかったのだが、その方が短時間で行けるので、もっぱら山道を通学路にしていたのだ。

山道は細く、急勾配で険しい。馴れない通行人は、この山道に辟易して徒歩で二度目にくることは殆どないが、それでもボクたちと同じように毎日通う人がいた。小学校の先生や郵便配達員である。他には、週に二度ほど来る魚屋とか保険屋だ。時には富山の「まんきんたん」も通った。

「悪たれ小僧」の裏庭の隅に、井戸とは別に清水の出る小さな池があって、年中冷たい水が湧き出ていた。夏にはスイカやマクワ瓜やビールを冷やしていた。ビールは程よく冷えて、コップに注ぐと水滴がつくくらいの天然の冷蔵庫になっていた。

村の人たちはもちろん、湧き水の噂を耳にした郵便屋や行商人たちも、好き勝手に利用していた。
湧き水のところに行くには、我が家の縁側を通らなければならない。だからそこへ行く前に、縁側で一声かけて、返事を待たずに裏庭へ回るのだ。声だけで誰が来たのかすぐに判った。村の人の声も判っていたし、毎日寄る郵便屋も判った。行商人に至っては、担いで来た荷物を縁側にドカッと置き、裏へ回っていった。

峠越えする人の中には、芸人やポン菓子屋もいた。変わったので乞食もいた。乞食のことを昔、ルンペンといって、それはすぐに判った。薄汚れた粗末な世帯道具を持てるだけ持っていたからである。

ある日、インテリ風なルンペンが訪れた。大きなリュックにアルミ製の食器をぶら下げ、カラカラといわせながら縁側に近づくと、その薄汚い持ち物を板間に置いた。それからダミ声をかけたのだ。「悪たれ小僧」は、父親と話し込んでいるのを座敷きの陰で聞いていた。

話しはだいたいこんなことであった。
「自分は医学を志して病院に勤めていたが、病院側と対立してそこを飛び出し、東洋医学なるものを広めるために、全国を行脚しているのだ。これから峠越えして姫路の方へ向かわねばならない。そこで、こちらに一泊させてもらいたいのだ。お礼に東洋医学なる術法を無料でさせて頂く」と、そんなようなことであった。

その話しを母親も聞いていた。母親は長い間、心臓を患っていたので、ことの外顔色が悪かった。インテリルンペンは、母親の青白い顔を見て即座に言った。「奥方は顔色がお悪いようだ。何か患っておられるようだったら、私が看て差し上げよう」と。

心配そうな父と母の顔を見て、「なに、心配はご無用。私の術法は身体の中の悪い血を、簡単な方法で抜くだけだ」と言った。それから父たちは、インテリルンペンから、その術法とやらを詳しく聞いていたようであったが、「悪たれ小僧」には殆ど理解できなかった。

とうとうインテリルンペンは、我が家に一泊することになった。彼は、まず風呂に入った。ところが夕食の準備が終わったというのに、一向に出てこなかった。夕飯が冷める頃にやっと出て来た彼は、来た時とまるで違う真っ白な顔をして、20才ほど若返ったように見えたのだった。

彼は夕食を済ませると、母親を床に寝かせて、湯呑み茶碗をあるだけ準備させた。そして、10cm角に切った新聞紙を更に4つに折って燃やし湯呑みに入れて、上半身裸の母親の背中に被せていった。母親の背中は湯呑み茶碗だらけになった。

数分後に湯呑みを取ると、お椀型の赤黒い斑点が背中じゅうについていた。それで悪い血が抜けたかどうか不明だが、とりあえず東洋術法なる行為は終わった。しかし、彼が入った後の風呂には、誰も入ることはなかった。

後日、父親は言った。「あいつ、騙しあがって・・・」と。ボクは、気がつくのが遅いと思った。インテリルンペンは、メシを食い、暖かい布団で寝、湯舟に大量の垢を残して去っていったという。
人の親切を利用し、善人を騙す輩がいるのは、いつの時代でも同じである。

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コメント

「夢の記憶」はどれも具体的に書き込めば、そのままお話しになると思いませんか。とくに、今回のはそう思った。

好意的なコメント、ありがとうございます。

「きっこ」を目指すか…。あの口の悪さ! きっこさんは(あまり読んでないけど)、本質的にはジャーナリストで、「情報の意味」の指摘がユニークだったり、本質をついていたり、また、情報の鮮度も高いのかもしれない。こんな感じだと思う。

ま、ぼくの場合は、「ぶつぶつ…」なわけで、とってもじゃないけど、あんなにはいかないよ。だって、情報源はテレビですよ。しかも、それも夏海さんと同じで観なくなっている(胸糞が悪くなるようなニュースばかりだから)。

それより、「夢の記憶」シリーズ。具体的な会話や描写があれば、もう「いける!」って感じです。つまり、このままフィニッシュにもっていけばいい。場面をきめて、フォーカスをそこに絞りこむ作業だけです。

インテリ乞食さん。やってることは、少し前までテレビなんかでやっていたことじゃないですか(ぼくは観た記憶があります。いまでも、どこかの病院でやってるかもしれない)。「お祓い」なんかではなく、どことなく根拠らしきものがあるように思える。

だから、だまされても仕方ないところもあるのかもしれない。ともあれ、おもしろい素材です。

雪深い山の家に、よくわからないインテリ乞食さんが迷いこむ。

現在の夏海さんの知識(調べたりなどした結果)を交えながら、ただ「昔、こんなことがあった」だけの話しではなく、そこに「不思議」を抽出するような書き方―――そのように書かれたものが、まず、頭に浮かびました。(イメージ的にです)

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