昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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不良に学んだ、役に立たなかったこと。

2007.03.10 (Sat)

トヨジというボクより4才上の中学生がいた。貧しい生れのトヨジは働き者であったが、中学校では札付きの不良少年であった。ボクは、ある時からトヨジに目をつけられるようになった。僕より1才上の、トヨジの妹を一度泣かしたことがあったからであるが、どんな理由で泣かしたのかは憶えていない。
何にしろその日以来、トヨジはことあるごとにボクを付け狙うようになった。ボクと目が合う度に、凶暴な面をして挑みかかってくるようであった。

春休みのある日、ボクは田んぼの畦道でチガヤ(ススキ科の若い芽)を摘んで、ムシャムシャとガム代わりに噛んでいると、どこからともなくトヨジが現れた。そして、ボクは襟首を掴まれ林の中へ連れ込まれた。襟首を掴んでいるトヨジの拳が紫色になって、大きく盛り上がっていた。

トヨジはボクを杉の木に押し付けて、2発3発と平手をくらわしてきた。視界が大きく歪んだ。続けてみぞおちに膝が食い込んだ。
トヨジは言った。
「今度、妹を虐めたら半殺しにするぞ」と。
トヨジは普段から空手の真似事をしていた。それで拳が腫れ上がっていたのだ。
トヨジに殴られはしたが、ボクは何の恐怖心もなく落ち着いていた。

当時、力道山の空手チョップが流行っていた。戦争を知らないボクたちの中でも、敗戦国日本を代表する国民的英雄になっていた。シャープ兄弟、噛み付きブラッシー、ザ・デストロイヤーを空手チョップでバッタバッタとマットに沈め、強いアメリカをやっつけているのだと思い込んでいた。

それを観て、ボクは力道山のように強くなりたいと思っていた。強くなるためには空手を使えるようにならなければならないと思っていた。そうすれば、トヨジのようなやつもやっつけられると思った。
トヨジが襟首を離した時、ボクは考えもしなかったこと言っていた。
「トヨちゃん、空手を教えて」と。
「あかん、お前のような女の子を泣かすようなやつには教えられん」と、トヨジが言った。
「もうそんなことせーへん。やから、空手教えて」
ボクは執拗に迫った。

トヨジは言った。
「漁。お前、空手を習って何すんねん」
ボクは、強くなる以外何も考えていなかった。まさかトヨジをやっつけるためだとは言えない。
「俺は、弱いやつには空手使えへん。悪いやつにしか使えへんのや」と、トヨジは言ったが、学校では不良で通っているし、現に年下のボクを殴ったり、正義の味方ぶっているのが可笑しかった。しかし、そう言いながらトヨジは、人に何かを教えることはまんざらでもなさそうな様子であった。

ボクは言った。
「ボクも悪いやつをやっつけたいんや」
「漁、空手はきついし、痛いぞ」
「かまへん。強くなれるんやったらかまへん」
「ほな、教えたる」

それから林の中で、トヨジの厳しい特訓が始まった。トヨジはどこで覚えたのか色んなカタを知っていた。
三戦(さんちん)というのがあった。それは、いつでも足で攻撃できるように、しかも身体を安定させるための姿勢で、膝から下のチカラを抜き、膝、内股、穴、腹筋を絞めて(チカラを入れる)、前後左右から攻撃を受けても姿勢を崩さないようにするもの。やや猫背にして両脇を絞め、拳に集中させる。

「三戦立ち」には、外ハチ、内ハチというのがある。文字通り足を外に広げる外ハチ、八の字にする内ハチであり、最後に四股がある。四股は相撲取りがやるそれと同じである。これが基本中の基本である。

「三戦」の時に呼吸法も学んだ。
息を吸う時、トヨジは両手を腰の辺りで幽霊ポーズをとった。それから、クーッという声とともにゆっくりと両手の甲を胸の前まで引き上げた。胸の前で一呼吸おいて、幽霊ポーズから今度は両手の三つ指を押し出し、ゆっくりとその手を下ろしていった。鼻で息をして、口で吐く。
「腹の空気は残らず吐き出すんや。これを続けとったら、自然に腹筋が強くなる」と、トヨジは言った。そして、
「“突き”(攻撃)はそれからや」と言って、紫色した自分の拳を片方の手の平で打った。

それから春休みの間、毎日のように、トヨジに呼び出されては、空手の特訓を受けた。ボクの拳はみるみる腫れてきた。一週間もすると拳の皮膚が捲れてきた。トヨジは言った。
「その皮を捲って、我慢して続ければ、その内タコになる。そうしたら力道山みたいになれるんや」

皮の捲れたボクの拳に血がにじみ、かさぶたができ、木を殴る度にひび割れて、何度も血が滲んだ。それを繰り返す内に拳が大きく盛り上がってきた。
しかし、その拳が役立つことは遂になかった。

<写真は、ザ・デストロイヤーの四の字固めにかかる力道山>
resutoroiya.jpg

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コメント

おもしろいなあ。トヨジのこと、彼の妹のこと、ボクのことを書き込んでいけば、それだけである内容をもった話しになると思う。

ネタは無尽蔵にあるみたいに思った。ドウドウブチみたいに丁寧に書き込めば、それでいいと思うんだけど。

生涯現役の心つもり?

14日記載ありがとう。
都会に住み着いた団塊の世代の悩みが始まったようです。層としての数量が多く、一元的にはくくれないでしょうが、若いときの何か遣り残した感覚を大事にしてもらえれば、面白くなるのではと期待もしています。
仕事の仕方や住む場所の限られた選択肢の中で新たな構想が必要になってきたのでしょう。
きついけれど生涯現役としての姿勢があれば生活の中で「見えない」モノも見えてくるような感じだけは、今の私には少しだけ感じられます。
お若い貴方方の新たな構想に多いに期待いたします。
私は貴誌への書き込みは少ないですが、毎回楽しく読ませてもらっています。仕事が忙しい中でテーマを見つけ書き続ける姿勢には関心を持っています。

いつも元気のないnineupです。それでも、元気がない。PCがどうしてもおかしい。1週間前にリカバリしたのに、またおかしい。

「s上手」も漫画みたいなオーダーだったりしたしね(お笑いだ)。

でも、ぼくのブログはタワーができた。ぼくのブログ人生ではじめてのこと(記憶してないけど)。更新なんかしてないのに、突然、タワーが出来てしまった。

わからないことが多いね、人生って。

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