昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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将太の夏休み(6)

2007.08.09 (Thu)

-------将太の復讐-------

将太は、夕方に取り込む干し草のことが気になり始めていた。しかし繁男の泣きっ面を見届けるまでは、どうしても居なければならないと思った。が、将太にはひとつ気掛かりなこともあった。それは、仮に繁男の泣きっ面を拝むことができたとしても、後で親の耳に入り、ドードーブチに行かせて貰えなくなるという最悪の事態になることだ。そのことの方が一番心配であった。

親に殴られるのは慣れているが、ドードーブチのみならず、下手をすると遊ぶことさえも許されなくなるかもしれない。こうなると、将太にとって生き甲斐を失ったも同然であった。だから、何が何でもこのことを簡単に白状する訳にはいかないと思った。
「将ちゃん、僕、帰るし。・・・将ちゃんも帰ろ」と、繁男が言った。
「う、・・・うん」
将太は何か、急にザワザワするものを感じた。

来た時と同じように繁男を先頭に、木橋へ上がって行った。急勾配の大きな岩を山猿のように登りながら、将太はちらっと橋ゲタの暗い部分を見遣った。
繁男の服は暗い空間にあったようだが、何かが動いているようにも見えた。

将太の後ろには良一と弟の良二が、大岩に垂れ下がった葛を手繰りながら登ってきた。先に上がった繁男は、散らばった服を一つ一つ指差して確認していた。そして、「これは良二ので・・・、これはショ・・・?」
「違う、これは僕のだ。」と、良一が繁男の掴んでいたパンツを取り上げた。そんなやりとりを横目で見ながら将太は、半ば濡れた身体にシャツを被った。繁男は、自分のものだけが見当たらないと分かって、ひどく焦っていた。そして、橋のあちこちを歩き回り、田んぼの畦を覗き、流されたと思ったのか、とうとう半泣きで川を覗き込んでいた。

「何しとん? 繁ちゃん。」と、将太は言った。
「僕の、服が・・・、無いんや」
「さっき、そこに脱いどったやんか」
「でも・・・、どこにも、無い」
「あるある。絶対あるて」

誰かに縋れば必ず頼みを聞いてくれるといった、繁男の態度にうんざりもしたが、将太の心のどこかに罪悪感が芽生えていたことも感じていた。
将太は、その場から逃れたかった。そして橋の上を行ったり来たり、川を覗いたり、それから、川に流されてないか手をかざして見るふりをしていた。

「繁ちゃん、神隠しにあったんやろ。お前、何か悪いことしたんとちゃうか。そやからお前の服だけあれへんのや」と、良一が真面目な顔をして言った。
「何にも悪いことしてへんて」
「そやし、何でお前のんだけや」
「繁ちゃん、よー考えてみ」と、良二が兄の後を引き取って言った。

良一兄弟の父親は、農家には珍しく小学校の教師をしていた。いつだったか、将太が良一の家に遊びに行った時、学校でよく耳した説教を長々と聞いたことがあった。「よー考えてみ」これが口癖のようだった。良二は、父親のその口癖を憶えていたのだ。

「ちゃうちゃう、何もしてへんて。なあ将ちゃん」
いつも偉そうに指図しているのに、今は見る陰も無く哀れな顔をしていた。その繁男を将太は心の中で失笑したが、すぐに打ち消した。繁男にしたことの後悔が将太を動揺させたのである。しかし、それを見透かされてしまうと、前にも増して図に乗ることは目に見えていた。そうなると始末に負えなくなる。
ここは、このまま知らんぷりを通し、誰かの仕業になることを祈るしかない。と、そう思った。

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