昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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将太の夏休み(7)

2007.08.10 (Fri)

-------フリチン-------

「おいっ、あれとちゃうか?」
橋ゲタを覗いていた良一が言った。
「ほんとだ。・・・繁ちゃん、あそこや」
良一の覗いていた橋ゲタを見下ろして、将太も言った。

良一が見つけてくれたことで、繁男に対する後ろめたさが、幾分か薄れていくようだった。そして、ここまで来たら、このまま嘘を押し通す以外にないと思った。

「えっ、どこに・・・?」
繁男は、将太と良一が覗いている橋ゲタの暗い空間を恐る恐る見下ろした。素っ裸のままの繁男は、「あーっ」と、女の溜め息のような声を出し、欄干を掴んでいる手をかすかに震わせていた。

「はぁーっ」
座り込んだ繁男は、青白い尻を地面につけたまま動こうとしなかった。
「繁男、早よ取って来い」
良一は、気の毒そうに繁男を見ながら言った。
「チクシュー。誰が僕の服を・・・」
繁男の怒った顔が、今にも泣きそうに歪んでいた。

橋ゲタの暗いところには、確かに白いそれらしきものが見えた。2メートルもない、目と鼻の先の暗闇にあった。しかし、そこに降りる勇気は繁男にないようだった。

「良ちゃん、代わりに取ってきて」と、橋げたを覗いている良一を見上げて言った。
「何で?・・・自分のもんやろ」
「将ちゃん、お前、行ってきて」
「しらん。お前の服やろ。お前、自分で取りに行け」
「・・・・・・・・・」

将太と繁男のやりとりを聞きながら、良一は、欄干の陰に落ちていた小石を拾い、その暗い空間に投げた。主がいないかどうか、確かめていたのである。将太も繁男も良一も、そこが青大将のねぐらであることは、前々から知っていたのだ。

と、暗い空間で一瞬、何かが動いたように見えた。繁男は、今にも泣き出しそうである。
「将ちゃん、お前やろ?」なおも繁男は言った。そして、「・・・・・いや、絶対お前や」
「何で僕なんや?」
「一番後に降りてきたん、お前やろ?」
「僕がそんなことするはずない。・・・先に帰った奴かも知れへんやろ」
「ほんじゃあ、広ちゃんか?」
「そんなん知らん」
「チクシュー、誰がしたんや」

繁男は、いかにして取るかよりも、誰の仕業かが重大な問題のようであった。そして、それが分かれば、ただちに責任をとって貰わねばならないといったような顔をしていた。しかし、繁男の小心さと裕福な家庭のわがまま息子にありがちな命令口調に、さすがの将太も癪に障ったのだった。

「僕、違うで。繁ちゃん、いっつもひとのせいにするやろ」
「ほんなら誰や?・・・やっぱり良ちゃんか?」
「またかいな」
 「・・・・・・・・」
良一は、うんざり顔をしていた。

「ひとのせいにするなら勝手にし。ほっといて帰るぞ」と、良一が言った。
将太はだんだん、繁男のことが気の毒になり始め、白状してしまいそうになるのを、必死で我慢していた。
「それはそうと・・・繁ちゃん、お前どうするんや?」
「何を?」
「何をってお前、そのままフリチンで帰るんか?」

将太は、仏心が出る自分と格闘しながら、なおも、犯人探しに執着する繁男の注意を反らそうとしていた。それでも繁男は、まだこだわっていたようだが、将太の言う通り、名家の御曹子として、いくら何でもフリチンでは帰れないことくらいは分かっていた。

繁男は、不様な姿で歩く自分を想像していた。
(このままだと、本当にフリチンで歩かなければならない。そうなると、村じゅう笑い者になる)・・・「本家の繁男はとうとう可笑しくなった」と。

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