昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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叔父の中の戦争――(5)

2007.09.13 (Thu)

だが、どの世界でもどの時代でも、卑劣なやつほどしぶとく生き残るものだ。
赤紙が乱発される反面、徴兵権を持つ連隊区司令部では、金品と引換えに日常的に不正が横行していた。それは、兵役原簿の破棄や兵役には耐えられない病歴の虚偽記載である。それらによって招集を逃れた者の職業をみると、軍需景気で利益を得ている人間や、条件に合った額が出せる会社の重役が圧倒的に多い。

また、呆れたことに配給業務に携わる幹部や料理屋の主人、それに地名人は言うまでもない。まさに「地獄の沙汰も金次第」とはこのことである。


早々と長男を戦地に取られた。
南方のどこかで戦っているらしいことは、ひと伝手に聞いていたが、生死も行方も知らされない、そんな不安な日々を強いられている最中に、残された息子までも送り出さねばならないのかと嘆いた。だが、天皇陛下のご命令と言われれば従わざるを得ない。帝国人民の盾となることを惜しんではならないのだ。

まさか息子をどこかに隠すわけにもいかない。ましてや「必ず生きて帰れ」などと口に出すことすら憚られる時代である。
軍事統制下で自分の立場を安んじるために、隙さえあればと卑劣な密告者は意外なところに潜む。もし、そんな噂が漏れでもすれば、たちどころに“非国民”となじられ、集団リンチに遭うのだ。
そして息子もまた、一番危険な最前線に送られ、弾よけにされることは十分わかっていたのだろう。

章吾の両親は自分の代で血筋が絶えることを危惧して、半ば強引に嫁を迎えようと準備をした。しかし章吾は頑として首を縦に振らなかった。
焦った両親は章吾を問いつめた。
章吾が密かに慕っていた相手は鶴子だと判った。

章吾は数年前から、村一番美しいと評判の鶴子のことを、心に秘めていた。もっとも最初の内は興味翻意であったようだが、その内に異性としての本能に変わり、十キロ以上も離れているにも関わらず、足しげく通ったという。今でいうストーカーをやっていたのだ。

ところが、寝耳に水の鶴子は当然嫌がった。嫌がって、章吾が来る度に押し入れに隠れて出てこなかったという。
ただ、時代はそうそうわがままを許してくれなかった。出征を半年後に控え、お国のために散ろうとしている男の願いは、則ち“朕”の命令に等しく、異を唱えることは、則ち“非国民”なのだ。
鶴子は、遂に章吾の元へ嫁ぐことになったのである。


昭和十七年十月、章吾は戦地へ旅立った。
強引だったとはいえ、あれだけ恋いこがれて愛した鶴子をおいての出征であった。これで、自分は二度と鶴子に会うことはあるまいと、半ば諦めての旅立ちであった。

嫌々ながら章吾と一緒になった鶴子であったが、それでも招集日が近づくにつれ、次第に変化する自分の気持ちに、気付かずにはいられなかった。
軍用列車の、鈴なりの窓から顔を出す章吾の姿を追い、プラットホームの群集の陰で小さく手を振った。章吾もまた、慣れない手つきで敬礼のポーズをとって見せた。

数日後に訪れる地獄の日々のことなど、考えもしなかった。章吾だけではない、この鮨詰めの列車の若者総ては、本当の意味での死の覚悟はなかった筈だ。そして、何の恨みもない異国の人間のことも・・・。

   つづく

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コメント

大きなテーマ、楽しみに~

大きなテーマでの連載、楽しみにしております。連続しなくても「まとまったら」記載する方式でもよいのでは、そのほうが「濃い」感じを私ども「読む側」からは感じられるのでは、などと勝手に考えております。

そうでしたか、貴君も「すもう」にはある意味での心痛をお持ちだったのですね。
私の場合は「どこまで」突っ張れるか、と夕方の開いた穴埋めにきゅうきゅうしている有様であります。

何故に、突然訪問者が増えたかの件。
どうやら内容よりも「見出し」で恐ろしきコトバを綴ったからではないかと思います。
検索する時に「ヒット」するコトバの系列があるようです。
恥ずかしい事に現在は「2~5人」と言う元に戻りほっとしております。
ではまた。

コメント、ありがとうございます。

いや、ぼくも詳しいわけじゃないですよ。ただ、思いついたことをそのまま書いているだけです。

夜になると、ま、一人になれるわけで、酔っ払いながらあんなことで遊んでいるというわけです。

空の色が違うのは、なぜ?

今日も、また暑かった。今週は連チャンで毎日、病院通いの予定です。で、今日はその最初の日。陽射しがキツイのなんの…。

で、おもしろいことを発見した。雲の間から空が見えるでしょ。それが、見上げた真上の方の空は濃いブルーなんですよ。ところが、地平線に近いというか…低い方の空は、少し白みがかった青なんです。水色って感じかな。

なぜですか? こういうこと、海賊は強そうなので訊くことにしました。

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