昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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叔父の中の戦争――(9)

2007.09.26 (Wed)

叔父は、火鉢の縁で煙管の灰を落とし、新しいキザミをねじ込んだ。

沈黙が流れた。そして、
「漁。ワシはな、・・・ワシは最後まで冷静やと思っておった。あんな酷い訓練やったけどな、ほかの誰よりも自分を知っとったと思う。あの時まではな」と、叔父は言った。

「あの時まで言うのは?」と、思わず口にした言葉に一瞬、俺は後悔した。
“あの時まで”。・・・“あの時まで”は少なくとも、叔父は冷静に自分を見ていた。しかし、その後は間違った。何が、どう間違ってしまったのだろう。
沈黙を続ける叔父を、視界の片隅で追いながら、次の言葉を想像していた。

「入営して三ヶ月やったか、隊員のほぼ全員が、それこそ捕虜にでもなったみたいに・・・、そや、あれは“生きる屍”とでも言うんか・・・」
煙管から一本の白い煙が糸を引いて、窓から差し込むオレンジに融けた。

「一歩間違えたら奈落の底へ落ちる。底無しの沼に首まで浸って、もがいてもがいて必死で這い上がろうとする手を、外道らが踏み付ける。毎日毎日そんな訓練でな、精も魂も尽き果て、いっそ死んだ方がどれだけ楽だと思ったことか」

既に陽が傾き、黄昏れ色に染まった窓際に、ケヤキのシルエットが落ち始めた。

「今の人たちは、おおかたの意味で幸せやと思うわ。でもワシから見ればな、幸せの本質いうもんは一体何やろと思う。少なくとも今は、恨みのない人間を自分の意に反して殺さんで済むわけやしな、理不尽に命令する外道もおらん」
煙管の灰を火鉢の角で、トンと落とした。

「幸せに慣れてしまっとるから、本当の意味での幸せが何なんか分からんようなっとる。平和に慣れてしまっとるから、平和の価値いうもんが分からんようなっとる。そうとちゃうか? 漁」
返す言葉が見つからなかった。確かに人を殺したことはないし、それを強要するやつもいない。今まで、世界が暗転するほどの経験もないから、そういう意味で俺たちは、叔父たちの“平和”の概念と本質的違っているのだろう。

「概念の違いはあるのだと思います。が、もう暗黒時代には戻らないでしょう、二度と」
「漁、それは違うぞ。人間くらい愚かな生きもんはおらんぞ」
叔父の視線が痛かった。

「もし仮にや、何かの拍子に戦わんといかんようになったら、どないする? たとえば、“北“が日本に向けてミサイルを発射したとしたら、・・・それで家族の誰かが犠牲になったとしたら、お前たちは指をくわえているわけにはいかん、そう思うやろ? 人間いうもんはいつの時代でもそうなんや。やられたらやり返す。挙げ句、やられる前に”やれ!“とな。猜疑心や欲の塊になるんや」

「いくら“北“がバカでも、自分の首を絞めたりはしないでしょう? 天に向かって唾を吐くようなものだから」
「そりゃワシにも分からんな。しかしな、日本に軍隊ができたらやで、後ろにアメリカがあろうがなかろうが関係なく、態度を一変させると思う。わざわざ大義名分を与えているようなもんやから」

「俺も、再軍備も憲法改正も、ましてや核武装なんて絶対反対やし、許してはならないと思ってますよ。武器を持ってない相手なら躊躇することもあるだろうし、反対に、脅すつもりでナイフ持って行って、ついカッとなって刺してしまうことだってある。殺意がなくてもね」

「近頃、抑止力のための核武装だという声も挙がっているようだが、一体何をもって抑止力と言えるのかワシには分からん。あれほど酷い戦争を始めておいて、せっかく平和憲法があるいうのに、またぞろ軍備しようなんてアホたれがおる。判っとらん、なっとらん」

「もし・・・もしですよ、日本が戦争を仕掛けられたとしたら?」
「ワシは二度とごめんだな。“やりたきゃやれ!”や。上のほうじゃ、“国民を護る義務がある”と言うけど、殺し合いをせずに済む方法くらいある筈や。それに銃を担いで人を殺すのは、漁、お前らやで。上の方のやつらは一番嫌なことをワシらに押し付けて、弾の届かんところで高見の見物しとるだけやないか。それにや、戦争で勝っても負けても、取り返しのつかん傷は残るが、喜ぶやつは誰もおらん。もしあるとしたらアメリカだけや」

戦争がある度に、軍需産業で潤ってきたアメリカの過去の歴史をみると、一目瞭然であることは俺にも分かっていた。

   つづく

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コメント

二束三文様
(あっちは文字量で駄目だったので、こっちに記載します)

(以下、二束三文さんの文を引用)
『今朝の朝日新聞朝刊で掲載
●大阪市職員数名が、カラ残業で不当受給8,000万
●大阪市職員50名(現時点)が、マイカー通勤を原則的に禁止されているにも関わらず、何年にもわたって不正を繰り返し、その間の通勤費も支給されていた。各職場には職員用の駐車場がないため、路上駐車や近くのコンビニで、違法駐車を繰り返していた。

石原東京都知事がツバル視察に1,500万の出張費を遣ったというのもビックリしましたが、まああれはあれで目的があったとは思います。でも、大阪市の職員の汚さは・・・、どう表現したらいいのでしょう。

20数年前、中国の当時の主席・トウ(当用漢字なし)小平が、犯罪者を46人、民衆の前で公開銃殺刑にしたらしいんですが、それはそれとして、あいつらを一度後悔させないとね。何かいい方法があったら教えてくださいよ、まったく。』
(以上、引用)

「倫理観の欠如」ってことに終わらせたくない、という思いがありますね。何らかの制裁をともなってほしい。同感!

やはり「人民裁判」だ~。ははははは…。

いや、じつは人民裁判っていうと、フランスの人民たちが王様たち(ルイ16世たら、そんな感じの名前)をギロチンで殺していった、みたいなことあったでしょ。人民の怒り、怨念みたいなもので王侯貴族なら無差別に殺していく…、こんなものじゃないかと思っているんですよ。

法的な手続きも、公平性も、罪や罰への慎重な考慮もなく、ただ人民の怒りが暴走し、一方的な裁判にかけられ、殺される…。だから、ほんとうは良くないことかもしれないんですよね。でも、納税者を馬鹿にする者には、これくらいの鉄槌がおりてもいい、という側面もある。

今、手元に資料がないんですが、Y詩人の本のなかでレーニンのことが書かれていました。それによると―――
ロシア革命が起き、革命政府ができた。政府を維持するためにその職員が必要となる。この政府職人の給与について、「当時のロシアの一般的な収入以下にしなければならない!」とレーニンは怒ったわけです。でも、これは守られず、以後、延々と「ロシア官僚主義」は続き(約70年ほどかな)、そして、ソビエトは崩壊した。

国家であれ地方であれ「公務員」とは、その社会システムを馬鹿みたいに維持するだけの人間です(何の生産性もない)。ぼくは、こんな仕事は本質的にはボランティアの仕事だと思っています。

●提案。
でも、給料を支払わない!というのも、あんまり~とするなら、世間相場の7割か8割か、ともかく1以下にして(世間相場を越えないようにして)、変動給与というか、給与の世間相場と連動させるようにする。レーニンの考えていたことはこのようなことだと思うんですよ。

民間は企業収益によって、ボーナスで調整するなどして給与(年収)が変動する。公務員の給与は、たとえば「全体としての社会の給与水準×8割」と決めてしまう。法律でガチガチに決めてしまうわけです。

こうすれば、公務員たちも、社会全体の給与水準を上げるように努力するのではないだろうか。

「公務員倫理法」ってのがあるようですが、倫理の細目は何か事件があってから、その項目が加わってくる…というようなことなんでしょ。すると、公務員たちは鵜の目鷹の目で、現在の法律の穴をさがす。こんなことをしている。


カラ残業でも、自動車通勤でも、公務員の手口は「書類上で給与をもらい、実態はそれを安くしている」ということでしょ。

今、議員においても「出」の面でのマスコミチェックが厳しい。この背景には、補助金というか…必要な経費は公金が出るというシステムになっている。政務調査費なんか、そうでしょ。

だから、嘘の書類を作り、その書類だけの公金(つまり税金)をせしめるという手口です。セコイ。でも、セコイで済まないだけの巨大な金額が動いているのも事実です。


でも、…というか、では。ふ~ちゃんが、なぜ、石原都知事より高額の給料を得ているんだろう。

たとえば、大阪府としてのGDPとか、あるいは大阪府の平均給与かに連動して、大阪府庁に勤める人間の総人件費が決まり、その中での配分が決まるのなら、
・大阪府庁に勤める人数が自然に抑制されてくると思う(現状は、膨大な税金食い虫が巣くっていると思う)。
・この中で、役職による給与配分が行われるなら、ふ~ちゃんの給与が石原都知事より多いということはないと思う。(どう考えても、東京のほうがビジネスは活発だし、一人当たりの収入も高いと思う)

ここには、勝手な積み上げ方式とでもいうような、公務員や議員がつくった方式があるのだと思う。勤続年数…みたいなことです。でも、大阪府の税収は去年と同じじゃないのは当然なことですが、にもかかわらず、勤続年数方式で公務員の人件費が自動的に膨らんでいくようになっている。

大阪は、府も市も、勝手に自動的に膨らむようにしたその数字を、あたかも必要な経費だと前提にしているのだろう。また、大阪の府議会も市議会も、その恩恵にあずかっているからだろう(…だからこれをチェックしない)。

ここにあるのは、書類上の問題として、物事が考えられていると思う。都知事は3年、でも、ふ~チャンは5年とかね(正確な年数は知らないけど)。だから、ふ~ちゃんは、知事として日本一の給与を得ている(この劣化するばかりの大阪の知事として)。


まず、人件費の総額規制がなければならない。民間企業では売り上げ以上の人件費など、絶対に、あり得ないのだ。

「カラ残業」「自動車通勤」問題でも、人件費の総額規制がないから本気になれないのだ。(現在は、書類上の積み上げ方式結果を「まず、ありき」にしている)

地方であれ国家であれ、公務員、そして議員…こんな人たちのインタビューでは、「法には触れていません」「書類上の不備はありません」という主張しかない。あとは、ノー・リコードである。

●結論。
・公務員の人件費を、国としても地方としても、民間と厳密に連動させるべきだ。(条件:民間より低くすべきである。ベストの姿はボランティアである)
・民間との連動によって、書類による積み上げ方式は消えるだろう。

あとは、「人民裁判」だ。

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