昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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叔父の中の戦争――(10)

2007.09.28 (Fri)

「漁。今の若いもんには難しいかも知れんがよ、日中戦争の時に七三一部隊いうもんが・・・、七三一部隊いうのは知っとるか?」
「少しくらいなら。・・・石井部隊がBC(生物・化学兵器)戦を画策して、生体実験までやったいう話しでしょう?」

「そや。ワシは七三一部隊とは関係のない部隊におったから、噂でしか知らんが、相当残虐なことをしとったらしい」と言った叔父は慌てて「ああ、ひとのこと言えた義理じゃなかったな」と付け加えた。

「終戦で東條はじめ戦犯の多くが処刑されたが、どういうわけか七三一部隊は全員、満州から脱出して、しかもや、免責されたという。何でか判るか?」
「想像ですが、・・・たぶんアメリカの、生来の狡さからでしょうか」
「まあそんなところやろ。らしいと言えばらしいが、世界一の頭脳集団が作った実験データを、むざむざソ連に渡しとうなかったいうのが本音やろな」

ようやく核心に触れそうなところで、叔母の声が戸口で聞こえた。食事の準備ができたのだという。


★ 七三一部隊について。『七三一部隊の終焉』より引用

 昭和二十年八月九日、ソ連対日宣戦布告。
 ソ連機甲部隊は怒涛のように南下を始めた。関東軍にこれを止めるすべはない。七三一部隊は悪業の証拠隠滅作業に追われた。機密が暴露してはならない。一切の証拠を破壊する必要がある。(略)

 隊員から捕虜が出ると秘密が露見する。全員脱出すべし。食糧を満載した特別列車を仕立て背後に迫るソ連軍と、犠牲になった(虐殺した)マルタの怨霊から逃れようと一気に南下する。大勢の同胞が北満の広野を彷徨している時に、七三一部隊員は昭和二十年八月末早々に帰国を果たした。

 部隊解散時、石井中将は訓示した。「七三一で知ったことは墓場まで持ってゆけ。戦友、肉親といえども絶対にしゃべってはならない」。
 絶対的なカリスマ性を持つ石井中将の呪縛にかかったか元隊員は沈黙を守った。七三一部隊に属していたことを秘して軍人恩給の申請を諦めた人さえいる。毎年終戦記念日ころのメディアでは戦争体験を語る老人が登場するが、七三一の隊員は名前、顔を秘してほんの少し語るだけだ。

 最高責任者の石井四郎は戦犯法廷に立つことはなかった。米軍に研究資料を提供することで一切の責任は免責された。米軍にしてみれば石井を絞首台に送っても得るものはない。
 米軍は労せずして自らの手を汚すことなく実験資料を手に入れた。その内容は最高の軍事機密に属するから窺いようがない。ペンタゴンの奥深く収まっていることだろう。(以下略)


すっかりと夜がふけていた。食事が終わると、叔父は茶菓子を叔母に用意させて、そのまま書斎へ入った。熱いお湯が急須に注がれ、香ばしい香りが煙草臭い部屋に漂う。気の早いコウロギが庭のどこかで泣いていた。

叔父は、一滴も酒を飲まない。戦時中、軍配給の酒を戦地で口にしたらしいが、それが最後であったのだという。だが、甘いものには目がなかった。俺が持参した羊羹を一本、ペロリと一人で食べてしまった。俺が「甘いものばかり、良くないんじゃないですか?」と言うと、「いいんや。ワシは長生きし過ぎたんやから」と言って、微妙な笑みを浮かべた。

「七三一部隊の研究施設が、世界遺産になっているいう話しですね」
「ああ、そうらしいな。あの終戦でソ連軍が南下しだした時に、都合の悪いもんを慌て隠滅しようとしたんや。要するに、ジュネーブ条約で禁止されとる決まりを破って、極悪非道な行為をしとったわけやから、証拠になるもんが残っとれば、それこそ隊員全員処刑は免れん。そやから実験データや“マルタ”を全部、焼却処分して建物も爆破して、とっとと日本に逃げ帰ったそうや。だけど建物はさすがに壊れんかったのやろ」

(ジュネーブ条約『非戦闘員の保護』・・・非戦闘員とは降伏者、捕獲者、負傷者、病者、難船者、衛生要員、宗教要員、文民であり、これを攻撃することは禁止されている。非戦闘員は保護対象であり、これを無視して危害を加えることは戦争犯罪である)

「その“マルタ” 言うのは一体・・・」
「人間のこっちゃ。それも生きた人間や。・・・中国人やソ連人を捕虜にして、ムシロに巻き針金で縛って、まるで牛や豚みたいにトラックで運んできて、色んな実験で使ったんや。そういう人間のことを“マルタ”言うんや」

叔父の話しを聞きながら、俺は、十数年前に起きたオウム事件を思い出していた。あの時麻原たちは、この七三一部隊が辿った道を再び歩もうとしたに違いなかった。
「ナチスがやったユダヤ人大虐殺とは目的が違うがな、日本軍はそれと同じようなことを、七三一部隊中心にやっとったんや」

   つづく

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コメント

ありがとう。

へえ! 知らなかった。

引っ掛けられたノック知事のお陰で「見張り番」ができたのだが、その見張り番は、自治労関係者である可能性がある…ということになる。

もう、お先真っ暗じゃないですか。

真っ暗な話題ばかりで、殷殷滅滅としている(個人的には、母のこともあるしお金のこともある)。

もう自爆寸前だ。

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