昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

叔父の中の戦争――(11)

2007.10.01 (Mon)

日本軍が闊歩する満州の、長春に近い平房(ピョンファン)という村がある。そこに七三一部隊が駐屯していた。この部隊は軍隊と異なり、おおむね学者や研究者で編成されており、戦闘応戦する兵器を殆ど装備しない、不思議な秘密部隊であった。

表向きは関東軍管轄区域内の、防疫と給水業務を行うのが目的で設置されていた。だが、内実は到底、人間の行いとは思えぬほどの所業を繰り返していたのである。

日本の敗戦が決まると同時に、怒濤のようにソ連軍が満州に雪崩れ込んできた。もし、一片でも実験データが残ってしまうと、もし“マルタ”が一人でも生き残れば一挙に明るみになり、関東軍はおろか七三一部隊全員、処刑されることは火を見るよりも明らかであった。

部隊員は慌てた。三千人もの“マルタ”を収容した監獄へ青酸ガスを流し込み、それでも死に切れない者に銃で打ちまくり、手投げ弾を投げ込み、虫の息のところへ、更に銃剣でとどめを刺した。

死体を残すわけにいかないため、穴を掘って死体を投げ込み、油をかけて燃やした。死体は生焼けで異様な匂いを放つが構っていられない。埋め切れない死体を生焼けのまま、手掴みでトラックに積み、松花江(スンガリー)の川に流した。
トラックや実験用の機器類は全部穴に埋めた。脱出直前に建物を爆破した。だが・・・。

「いくら戦争は殺し合いや言うたかてやで、人間、正気であないなことできるもんやあらへん。犬畜生にも劣る気狂いや」

七三一部隊が行ったBC戦のことは、何かの仕事で調べたことがあったが、詳しいことは知らなかったし、俺たち平和な時代に生きる人間の、ごく普通の感覚からしても想像を絶する歴史である。

「その犬畜生を生かしてでも欲しがったアメリカは、それをどうしようと思ったんですかね?」
「一部の報道では、その後の朝鮮戦争やベトナム戦争に使われたんやないか、いうことや」
「枯葉剤だけじゃなく?・・・彼らがやりそうなことですね。・・・そやけど不思議に思うのは、隊員の誰かが持ち帰って、ということはつまり、そいつらは何か企んでいたとも考えられますね」

「かも知れんが、結果的に何も起こらんかった。例のオウム事件まではな。もっともあいつらは七三一部隊の生き残りでもないから、どこかで情報を手に入れたんやろ。それ以上のことはワシにも分からんが」

「七三一部隊の再来か」
「まさにな。まあ七三一部隊のことはともかく、ワシも歳やし、いつ迎えが来るか分からん。そやからあの時代の体験をや、誰かに言うとかんとあかん思うてな」

羊羹を食べ尽くした叔父は手持ち無沙汰なのか、キセルを手にとった。よく煙草を吸う叔父である。
「太原の時のことは、あの世まで持って行くつもりやったけど、国民を不幸のどん底に陥れた責任の一端は、ワシにもある思てな。仮にも、命令やったとはいえ極悪非道な戦争に加担した人間の一人として、ちゃんと伝えなあかん思たわけや」

やっと決心がついたのだろう、叔父はキセルを持った手を火鉢に置き、居住まいを正した。

昭和十八年二月。
偏西風に乗った寒波が太原の原野を包み、みるみる極寒に見舞われた。氷点下二十度。平均気温は摂氏を上回ることは殆どない。
章吾たちの部隊は、鄭州から北上してきた別部隊と、陽泉辺りで合流するため出発した。それは三日目の宿営地で事件は起こった。

前進する各部隊は、常に宿営地設営のために先行部隊を発たせ、円滑な行軍をはかっていた。その部隊には放火隊というものは含まれており、行軍途上、中国の民衆の生活をことごとく破壊し、焼き払い、通り魔の集団となって進んでいった。

   つづく

スポンサーサイト

<< 前の記事へ | HOME | 次の記事へ >>

コメント

「M」、あまり熱心じゃないので覗いても気がつかなかった(ぼくは鈍感だ。ははははは…)。

「M」の友だちを覗いたら、次のようなコメントがあった。

**(コピー)
ミクシーのレイアウトも変わった。マイクロソフトのニュースが産経にかわった。
**

どこか変更されているのでしょう。でも、不熱心なぼくは気がつかなかった。


ところで、「ショートストーリー」なんかではなく、「ロングストーリー」じゃないの? いいけどね。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL

 | HOME | 

プロフィール

natsumiryo

Author:natsumiryo
FC2ブログへようこそ!
夏海 漁の
悪ガキワールドへようこそ!

FC2カウンター

フリーエリア

フリーエリア

月別アーカイブ

フリーエリア

フリーエリア

翻訳できるよ!

ブログ内検索

Powered By FC2ブログ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。