昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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釣りキチの始まり

2008.05.11 (Sun)

大学卒業後、郷里で教職に就いていた友人・Tの学校が夏休みに入ると同時に、彼の住む田舎へ行った。30年前のことである。
大阪から高速バスで約1時間半。加西インターのバス停で下車。縦貫道の下は真っ平らな田園地帯が広がり、パラパラと集落が点在している。

彼の両親に迎えられ、新しく増築したというハナレの方へ案内された。ハナレには、書斎兼用のアトリエがあり、隣の間は、やがて彼が所帯を持った時のためにと、やや広めの寝室が用意してあった。

いくら好きな釣りだからといっても、元来夜型人間のボクには、朝の4時起きは辛いものがある。普段、2時3時に寝入るわけだから、その頃は熟睡の頂点の中にある。結局、気になって眠れないのである。

Tはボクに気遣って、前夜の10時に消灯してくれた。
ボクは、一旦は眠ったものの、夜中には早速目が覚めてしまい、まんじりともしない時間を過ごすことになった。

夢と現実の間を行き来し、Tの目覚めを待った。
カエルの鳴き声以外は、物音ひとつしない。

目覚まし時計の音ともにTが起き上がった。
「眠れた?」とTが聞く。
「なんとか」
気怠い身体に鞭を打って、ボクも寝床を出た。

辺りはまだ真っ暗闇である。
ムッとする湿気を帯びた空気が、部屋じゅうに漂う。
雨戸を開けると、盆地特有の冷気が一気に流れ込んだ。
窓の外は濃紺一色に塗り潰されている。

「今日は晴れるぞ」
Tは、自信満々に言った。
「すごい霧やろ。・・・こういう日は晴れるんや」
濃紺の霧に埋もれる、そんな日は決まってはれるのだと、Tは言う。

身体は動くが頭の芯は、まだ闇の中にいた。
のろのろと着替えをする。
Tは手際よく準備をし、玄関に降り立った。
門灯を点けるが、庭石が霧でぼやけて見えない。3メートル先が闇に消えている。

Tから手渡されたスコップを担いで裏の畑へ。
畑の端がこんもり盛り上がっていた。枯れ草の山にスコップを入れると、生暖かい空気が滲み出て湯気が上がった。
曇った目をこする。
枯れ草の中に、無数の生き物がピンピンと跳ねる。指ほどの太さのミミズが群れていた。

Tは、それを鷲掴みにしてバケツに入れた。
たっぷりと入れたバケツに、枯れ草のフタをして車に乗った。
霧はますます濃くなっていく。
ヘッドライトの角度を下げ、ゆっくりと滑り出た。

そこが道なのか田んぼなのか判別つかない薄明りの中を、勝手知ったる庭のように、Tは車を走らせた。
交錯する農道で何度もハンドルを切る度に、ライトの帯に霧が覆い被さった。
農道がやがて坂道に変わり、森へ入っていった。

フロントガラスの曇りが水滴になって流れた。薄ぼんやりとした木々のブラインドが両端に消え、沼地に出た。
「ここは俺の秘密の場所なんや」と、Tが言った。
ライトを消し、バケツと竿を抱えて足早に沼へ向かった。
沼地の中に網目状の草地があり、その中の一本を選んでTが先導した。踏み外すと沼に足を取られるのだ。

草地の先に小川が見えた。
「ここや!」

川面を見た途端、身体じゅうの毛穴が縮んだ。
エモノの密度が水の量に匹敵するのではないかと思えた。
川の流れが分からない。そこにも霧が這い、かすかな風でドライアイスを流したように漂う。

Tが指差す川面がかすかに畝り、プクプクと泡立つ。
水の中の、得体の知れない塊が川面を押し上げて、右へ左へうごめく。

ミミズを掴む手の震えが止まらない。
針に仕掛ける手がもどかしい。
心臓の鼓動が早鐘を打ち、耳ものまで響いた。

一投目の仕掛けが川面に触れる、その瞬間、泡立つ畝りが更に盛り上がり、無数のエモノが一点に殺到する。
道糸がピーンと張り、そして竿がしなった。
早鐘がドンドンと音を立てた。

25センチのヘラブナであった。

ものの30分も経たない内に、大きな魚籠が満タンになっていた。ヘラブナ30尾、ニゴイ10尾。それをすべてリリースして、再び糸を垂れる。

この辺りの川や池も、殆どがブラックバスやブルーギルで汚染されているんやが、どういうわけか、ここは昔か変わらへん」と、Tは言う。
フナ、鯉、鮎、ナマズ、ウグイ、ハヤ、うなぎ、そしてモクズガニなど、加古川とその支流には多くの在来種が生息するらしいが、あれから30年、今や日本じゅうの河川には、肉食外来種で埋まってしまったようだ。

ともあれ、ボクが釣りにのめり込むことになったのは、この経験があったからである。
ニゴイ.jpg

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コメント

幻想的な釣りですね!

なんとも幻想的な雰囲気の釣りの風景!!
全国の釣きちさんが憧れるシチュエーションですね~。

最近では本当に外来種の魚が増えてしまい、
生態系が崩れてしまっているようで。

ある水産メーカーのお客さんが、今この外来種の魚を
なんとかうまい製品にして数を減らすことに協力できないかと
頭を悩ましています。
いろいろ調理してみているそうですが、臭くってどうしようも
ないそうです。

ブラックバス、食べましたよ。

ねずみさん、コメントありがとうございます。

しかし、増えましたね、外来種。
どこに行っても、ブラックバスばかり。
また、それ目当ての愛好家の多いこと。嫌になります。

貴重な在来種が食い荒らされているというのに、
あの「柿の種」の曲を出した、エコ生活主義の清水某は、
外来種排除に反対しているというのですから、本末転倒と言わざるを得ません。

さて、
増えすぎた外来種の食品化は?と世間では苦労が絶えないようですね。
私は以前、友人Tの家でブラックバスを焼いて食べたことがあります。

実に美味くなかったです。というか、はっきり言って不味かったです。
ねずみさんは「鰹」を焼き過ぎたことありますか?
あるいは、マグロを焼いて食べたことありますか?

ちょうど、あんな食感です。
パサパサの、調理のしがいのないシロものです。
焼いても、ボイルしても、天ぷらや香辛料で素揚げしても
まったく、最低の食材でした。

いつか、石油が手に入らなくなり、輸入手段が断たれて
食糧不足の時代になったら、ひょっとして、貴重な食材になるかも知れませんが。

近い将来、そんな時代がくるかも。

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