昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

曾根崎心中

2011.07.28 (Thu)

この世の名残り、夜も名残り。死に行く身をたとふればあだしが原の道の霜。一足づつに消えて行く夢の夢こそ哀れなれ。あれ数ふれば暁の、七つの時が六つ鳴りて、残る一つが今生の、金の響きの聞き納め。寂滅為楽(じゃくめついらく)と響くなり。

鐘ばかりかは、草も木も空も名残りと見上ぐれば、雲心なき水の面北斗は冴えて影うつる星の妹背の天の河。梅田の橋を鵲(かささぎ)の橋と契りていつまでも、われとそなたは女夫星。必ず添ふとすがり寄り、二人がなかに降る涙、河の水嵩(みかさ)も勝るべし。

心も空も影暗く、風しん と更くる夜を、星が飛びしか稲妻か、死に行く身に気も冷えて、「アヽ怖は。いまのはなんの光ぞや」「オヽあれこそは人魂よ。あはれ悲しやいま見しは、二つ連れ飛ぶ人魂よ。まさしうそなたとわしの魂」「そんなら二人の魂か。はやお互は死にし身か。死んでも二人は一緒ぞ」と抱き寄せ肌を寄せ、この世の名残りぞ哀れなる。

初は涙を押しぬぐひ、「ほんに思へば昨日まで、今年の心中善し悪しをよそにいひしが、今日よりはお前もわしも噂の数。まことに今年はこなさんも二十五の厄の年、わしも十九の厄年とて、思ひ合ふたる厄祟り、縁の深さの印かや。未来は一つ蓮(はちす)ぞ」とうちもたれてぞ泣きゐたる。


ohatu.jpg


徳兵衛、初が手を取りて、「いつはさもあれこの夜半は、せめてしばしば長からで、心も夏の短夜の、明けなばそなたともろともに浮名の種の草双紙。笑はば笑へ口さがを、なに憎まうぞ悔やまうぞ。人には知らじわが心。望みのとほりそなたとともに一緒に死ぬるこのうれしさ。冥途にござる父母にそなたを会はせ嫁姑、必ず添ふ」と抱きしむれば、初はうれしさ限りなく、「エヽありがたい忝い。

でもこなさんは羨ましい。わしが父さん母さんはまめでこの世の人なれば、いつ逢ふことの情けなや、初が心中取沙汰をあすは定めて聞くであろ、せめて心が通ふなら夢になりとも見て下され。これからこの世の暇乞ひ、懐しの母さまや、名残り惜しやの父さまや」と声も惜しまずむせび泣き。

「いつまでかくてあるべきぞ。死におくれては恥の恥。いまが最期ぞ。観念」と脇差するりと抜放し、馴染み重ねて幾年月いとし可愛としめて寝し、いまこの肌にこの刃と思へば弱る切先に、女は目を閉ぢ悪びれず、「はやう殺して殺して」と覚悟の顔の美しさ。

哀れをさそふ晨朝(じんちょう)の、寺の念仏の切回向。『南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏』を迎へにて、哀れこの世の暇乞。長き夢路を曾根崎の、森の雫と散りにけり。

・・・・・・・・

知る人ぞ知る近松門左衛門の

人形浄瑠璃「曾根崎心中」・天神森の段である。

添い遂げることなど不可能な、お初と徳兵衛が

悲観のあまり心中を選ぶ。そんなところか。



別に心中ものに興味があるのではない、

以前、この近くにお得意があり、時間合わせのために

よく「お初天神」に立ち寄っていたのだ。

ここは時々、骨董市があるのを知っていたので、

冷やかしでと歩いて回っていた。

いつからこのブロンズがあるのか分からない。

だけど、あのドロドロした物語から思えば

なんとなく健康的な二人に見えるが。

古今亭志ん生の噺からは、とても想像できないのは

ボクだけだろうかね。





スポンサーサイト

<< 前の記事へ | HOME | 次の記事へ >>

コメント

ビックリの展開

急に渋い世界に入り込んでしまってびっくり!怪談ものではなく、心中もの。新しい暑気払い?

名調子!

夏海 漁様 こんにちは
これはこれは素晴らしい! 名調子ではありませんか。
日本人にとって七五調というのはなんて心地よく響くのでしょうね。
斉藤孝著の「声に出して読みたい日本語」(CD付き)では
平野啓子がこの冒頭部分を「川の水嵩も勝るべし」まで1分半ほど朗読してくれていますが、大変印象的でありました。

この世との暇乞いに「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」のお念仏はやはりお土地柄ですね。
これが「南無妙法蓮華経」のお題目でしたら、賑やか過ぎるかもしれません。

風変わりな企画を楽しませていただきました。

Mahalo!AOさん

へへへへ・・・・
昔ね、古今亭志ん生(何代目か不明)のテープを聴いてて、暗すぎる物語やけど、どうも好きなんだね、こういうの。
志ん生さんは怪談ものが結構あるから、暑気払いにいいかもね。

ぶちょうほうどのへ

誰かに暑気払いなんて言われましたけど、そうかも知れません。
よくよく考えたら、この物語のストーリーより、たぶん、古今亭志ん生の語りが好印象でしたのでしょう。
映画・居酒屋ゆうれいの中では、店の主人がうたた寝している横のテレビで、古今亭志ん生の怪談が放送されています。
たぶんこういうのでは、と思いますよ。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL

 | HOME | 

プロフィール

natsumiryo

Author:natsumiryo
FC2ブログへようこそ!
夏海 漁の
悪ガキワールドへようこそ!

FC2カウンター

フリーエリア

フリーエリア

月別アーカイブ

フリーエリア

フリーエリア

翻訳できるよ!

ブログ内検索

Powered By FC2ブログ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。