昔遊びと悪ガキ

キラキラとした別世界。・・・今考えると、これほど外の世界が魅力的に感じた時代はなかった。

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(二)その男…3

2013.10.20 (Sun)

(二)その男…3

 杉田が歩道沿いのベンチに腰を下ろそうとした時だった。
 その男を取り囲んだ五人の中学生が、植え込みの死角をいいことに、彼を襲撃し始めたのだ。何が原因かは分からない。五人は奇声を発しながら足蹴にし、持っていたスポーツバッグを振り回した。男は、ベンチから転げ落ちた。

P1070076.jpg

 杉田は、警察を呼ぼうとして携帯電話を持ったが、一旦出した携帯をバッグに戻した。警察が来るまで、その男が無事でいる保証はないし、五人は逃走するだろう。

 杉田は急いだ。その男を取り囲んでいた五人は振り向き、杉田を睨んだ。リーダー風の男は、赤いTシャツを学生服の下に着て、眉をツルツルに剃っている。五人揃って、学生服の前をダラッと開けて、一応にして腰パン風にズラしていた。チンピラの玉子にもならない、ボウフラのようなものである。

 杉田は笑いを抑えるのに必死であった。だからと言って、放っておくこともできない。おそらくその男は抵抗もできないだろうし。

 赤シャツの男は威嚇しながら前へ出てきた。
 「おっさん、何やねん」
 杉田は、持っていたバッグをその男が背にしているベンチへ置いた。そして、
 「お前らどこの学生や」と言った。

 「関係ないやろ。おっさん、そないにケガしたいんか」
 転倒したその男は、ベンチに背を預けたまま俯いている。鼻血で口の周辺を汚しているものの、幸い大きなケガはしていないようだ。

 杉田は赤シャツに向き直り、言った。
 「警察呼ぶけど、いいんか? お前らどこのガキか知らんが、弱いもんを痛めつけて、それで楽しいんか?」
 「だっせー。関係ない言うとるやろ」
 「そうか。そないに汗かきたいんか」と言いながら杉田は、身体に染み付いている三戦(サンチン)立ちの構えに入った。

 杉田は十数年前まで空手をやっていた。始めたきっかけは実に不純な動機であったが、それから一度も、自ら手を上げることはなかった。

 杉田は五人に向かって言った。
 「俺はケンカでけへんのや。そやけど、お前らが手を出した瞬間、こっちの正当防衛が成り立つんや。それでもくるんやな」

 赤シャツは半歩下がった。他の四人は遠巻きにしていた。杉田が不利になるや否や、飛びかかるつもりだろう。
 「おっさん、五対一じゃ勝ち目あらへんで」
 「アホか、うしろ見てみんか。他のガキはもう怖じ気づいとるやんけ。さっさとケツ捲って、いにさらせ」

 赤シャツは、一旦上げた手を引っ込めるなど、男としての沽券に関わると思ったのか、低い姿勢から右腕を突き出してきた。

 杉田は、左に躱しながら右手首を掴んだ。転瞬、赤シャツの背後に回り、腕を捩じ上げた。そのまま上げれば脱臼するが、止めた。同時に杉田は左肘で、赤シャツの首を押さえつけ、右脇腹に手刀をくらわせた。

 赤シャツの身体はくの字に折れ、膝から崩れ落ちた。水月(スイゲツ)であればより効果があるのだが、場合によって、命の危険に関わることもあったので、筋肉の少ない脇腹にしたのだ。
 「まだやんのんか?」

 遠巻きの子どもたちは、それぞれにバッグを拾い、赤シャツを担いで立ち去った。
 杉田は、転がるように去る五人を見送りながら、マイルドセブンに火を点けた。



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